血栓性評価班
動物由来組織に対する超急性免疫反応を評価する生体外試験システムの研究開発
ウシやブタなどの異種組織をヒトへ移植する際、移植組織に発現する糖鎖抗原(α-Gal)と、霊長類が持つ自然抗体(抗α-Gal抗体)による超急性免疫反応が課題です。この免疫学的安全性は通常、サルを用いた動物実験で評価されますが、ヒト血液を用いた超急性免疫反応の評価試験システムを開発することができれば、動物由来組織の研究開発における新たな安全性評価方法となります。ヒト血液を用いて超急性免疫反応をin vitroで評価できる試験装置を開発することで、超急性期における免疫反応の迅速かつ定量的な評価が可能となり、動物由来組織を用いた医療機器の研究開発への貢献が期待されます。
本研究では、ヒト血液を生理的条件下で循環させる試験回路 (図1)を作製し、動物由来組織(例:動物由来脱細胞化組織)への曝露によって誘発される超急性免疫反応を評価可能な試験システムを開発しています。このシステムにより、ヒト血液から異種組織片に誘導される免疫因子を測定し、超急性免疫反応の強度を定量的に評価する研究を推進しています(図2)。


図1 試験回路 図2 免疫蛍光染色(IgG)
左冠動脈主幹部分岐部病変のステント血栓形成性を評価する生体外試験システムの研究開発
左冠動脈主幹部(左冠動脈の中枢部分)は広範な灌流域を担い、左心室心筋への血流の80%以上を通す極めて重要な部位です。そのため、主幹部に留置したステントが血栓により閉塞(ステント血栓症)した場合、心原性ショックや突然死のリスクが高くなります。特に、主幹部分岐部(左前下行枝と回旋枝の分岐領域)の病変は、ステントと血管壁の間で圧着不良が起こりやすく、ステント血栓症のリスク因子と言われています。左冠動脈主幹部分岐部の治療に適したステントのデザインやサイズ、留置方法などを生体外試験で明らかにすることによって、ステント血栓症のリスク低減に繋がり、患者さんにより安全な治療を提供することができます。
本研究では、1) 左冠動脈主幹部分岐部病変の三次元的形態を模した病変モデル、および 2) ヒト血液を循環させた拍動試験回路を組み合わせた生体外試験システムの研究開発を進めてます(図1)。このシステムを用いて、主幹部分岐部に留置されたステントのデザインや留置方法が、血管壁との圧着性、およびステント血栓形成性に与える影響を明らかにすることを目指しています(図2)。


図1 ヒト血液を循環させた拍動循環回路 図2 光干渉断層断層によるステント血栓形成の評価