血液適合性評価技術班

脳血栓回収デバイス

脳血栓回収デバイスは、血栓を絡めとり、引き抜くことで血流の再開通を図る急性期血栓回収療法で使用するデバイスです。血液適合性評価技術班では本デバイスの引き抜き時の血管損傷、血栓の脱落率を評価しています。力学的特性を制御した血栓モデルをブタ血液にて作製し、シリコーン製脳血管モデルを用いて評価を行い、臨床にて医師の経験により行われている手技の有効性を科学的に示していきます。(Fig 脳血栓回収デバイスの展開の様子)

フローダイバータ

フローダイバータは、大型・巨大脳動脈瘤の治療に使用する網目構造をもった円筒状のデバイスであり、治療後の瘤の収縮が期待されます。このデバイスの有効性を評価するためにはフローダイバータの留置が瘤内の流れに与える影響を解明することが重要です。粒子画像流速計測法(PIV)にて瘤内の流速分布を解析し、フローダイバータの留置前後の瘤内流れの変化の計測を行っています。現在までに、フローダイバータを留置した後の瘤内の流れの形態は、フローダイバータに衝突する流れと母血管から染み出る流れが組み合わさったものであるという示唆が得られています。

植込型補助人工心臓(EVAHEART®)

植込型補助人工心臓は、重症心不全患者の心臓のポンプ機能を補助する医療機器であり、臓器提供者不足の解決策として需要が増加しています。しかし、課題として左心室に挿入する脱血管の周囲に血栓が形成し、血栓が飛散する有害事象があります。当研究室では、脱血管から飛散した血栓量の定量化に向け、in vitro血栓性試験法の開発を行いました。その結果、従来の脱血管とチタンメッシュ脱血管を使用した際の血栓飛散量を計測でき、この試験法によりチタンメッシュ脱血管が治験無しで承認を受け患者さんに使用されています。

小型拍動回路

動物血液の血小板・血液凝固に関する因子の測定キットはほとんどなく、ヒト血液を用いることができれば材料や薬の血液凝固活性および抑制のメカニズムを評価することが可能となります。そこで本研究ではヒト血液を用いて血液適合性比較評価試験を実現するための小型拍動回路の開発を行い、本試験回路を用いて血小板活性と血液凝固活性の経時的な変化を検討しています。本研究で開発している小型拍動回路により、ヒト血液を用いて、血流条件が経時的な血液凝固因子の変化に及ぼす影響の分析を進めています。